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最高裁判所第一小法廷 昭和61年(あ)1382号 判決 1992年1月30日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護士大塚喜一ほか一二名の上告趣意のうち、現行の死刑制度につき憲法三六条違反をいう点は、死刑がその執行方法を含め憲法に違反しないことは当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第一一九号同二三年三月一二日大法廷判決・刑集二巻三号一九一頁、昭和二六年(れ)第二五一八号同三〇年四月六日大法廷判決・刑集九巻四号六六三頁)とするところであるから、所論は理由がなく、憲法三一条、三八条一項、二項違反をいう点は、記録を調査しても、被告人の自白の任意性を疑わせる証跡は認められないから、所論は前提を欠き、判例違反をいう点は、所論引用の各判例はいずれも事案を異にし本件に適切でなく、その余の点は、事実誤認、量刑不当の主張であって、適法な上告理由に当たらない。

被告人本人の上告趣意は、事実誤認の主張であって、適法な上告理由に当たらない。

また、記録を調査しても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない(本件は、特殊浴場の接客婦であった女性と親密に交際していた被告人が、被告人の将来を案じた両親から同女との交際を断念するよう何度も説得され、これに反発していたところ、父親から露骨な言葉で右女性の職業に触れて同女との交際を非難されたことに憤激し、父親を登山ナイフで多数回突き刺して殺害し、さらに、その場に来合わせた母親を同様に右ナイフで多数回突き刺して殺害した上、殺害の犯行を隠ぺいするため、各死体に重りを付けて海中に投棄したという事案であって、犯行の動機に酌量の余地は乏しく、殺害の態様は残虐かつ執ようであり、結果も重大で悲惨であることなどに照らすと、両親の殺害が計画的な犯行とはいえないこと、被告人にはさしたる前科、前歴がなく、犯行時は二二歳で、社会的にも精神的にも未熟であったことなど被告人のために酌むべき事情を考慮しても、なお被告人の罪責は極めて重いというほかなく、原判決の維持した第一審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして、当裁判所もこれを是認せざるを得ない。)。

よって、同法四一四条、三九六条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大堀誠一 裁判官 大内恒夫 裁判官 四ツ谷厳 裁判官 橋元四郎平 裁判官 味村 治)

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